能「くるす桜」を楽しむために

郡上市図書館「おとなの学校」で松井陽介さんによる講座があった。
松井さんは世阿弥に関する論文を書いている。
大和町では8月7日の明健神社の7日祭りに能「くるす桜」が演じられている。

ずっと前に松井さんから個人的に能のことを聞いたけど、今回は具体的な脚本での説明でとてもよく分かった。

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東常縁の霊と僧が語り合う場面である。
テーマは「古今伝授」つまり和歌の心を伝えること。

能はギリシャ演劇と同じで、仮面劇であり、コーラス(地唄)もある。
少し異なるのが歌舞があるということ。
つまり、演劇であり、音楽劇であり、歌舞劇である。

上の脚本は、江戸時代ものをベースにして30年前に創られた現代能だけど、とてもよくできている。
この能は、和歌のこころを常縁の霊が語るところが基本なのだろう。
もちろん霊が突然語りだすわけではない。
旅の僧の求め(縁)によって、常縁自身(風や花や月)が語り出す。
聞き手と語り手の妙。

だからこそ、その膨大なそれまでに詠われた和歌や、古今集の仮名序、源氏物語などの文学や、大和踊りや謡、天台仏教の教理も踏まえているかなり凝縮された総合的な芸術なのだ。

そして、古文書で読んでいる万留帳の作者(粟飯原氏)が、江戸時代から桜が折れたり枯れたりしていると必ず植え直した。なぜこだわったのかよくわかってくる。

では和歌のこころとは何か。
それは古今集の仮名序に余すところなく描かれている。

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古今伝授と国ゆずり  古今集仮名序にみることばのちから)