「21世紀の資本」ピケティの講義を見る

昨日は一日中雪だったが、12月のようにそんなには積もらない。
 
膳椀に 露きるうちや 春の雪
 
確実に春の雪である。
土曜日に寒い中で、何時間も座っていたせいか、かぜの症状がでている。
昨日は無理をせずに、ためていたビデオのピケティの講義3、4、5回目を連続で見た。
途中で、ウトウトとして、飛んだところがあり、あまりわからなかった。
 
ピケティは、19世紀から現在までの所得や資産のデータをできるだけ集める。
そのデータのグラフを見ていると、現在の状態が当たり前とは言えないことがわかってくる。
そして、今まで当たり前と思っていたことから、新しい問いが出てくる。
例えば、「会社のトップの給与が最近こんなに上昇したのはなぜなのか?
それに対して、様々なモデルを使いながら、最も合理的と思われる仮説を見出す。
 
この問いに対しては、
以前は累進課税で、給与をいくらもらっても税金で取られるだけだから、
トップが給料の上昇を求めても意味がないと分かっていたが、
新自由主義規制緩和によって累進課税が緩んで税率が下がり、
トップの中に給料を上げようという意識が出てくる。
そうなれば、給料を上げることが簡単にできるからと言っていた。
 
とすると、できるかどうかは別にして、
累進の税率を上げ下げすることで給与格差をコントロールできるということだ。
かなり説得力があるように感じる。
 
彼は、給与が上がることがいけないとは言っていないが、
その上がった給与が妥当かどうかの評価は難しいと言っている。
そして、資産の格差については消費の面から見ても問題が多いと言っている。
 
資産格差がなぜ拡大するのか」という問いには、r>gを用いて説明している。
資産収益率>経済成長率(所得)によって、資産と所得の違いを明確にすることができた。
でもこれって、
資産運用で資産が増えても、それは経済成長(=給与=所得)には影響を与えていないということ?
このままr-gが大きくなり、成長率(=所得)が伸びなかったら、完全な相続社会に突入するということ?
 
面白かったのが、「人々がなぜ資産の貯蓄をするのか」という問いに、
次のモデルを提示しながら説明していたところ。
「予備的貯蓄モデル」「ライフサイクルモデル」「王朝モデル」「ランダムショックモデル」
私のライフサイクルモデルが相対化できた。
 
ピケティが言っているのは、
資本は、時代によって変化しており、戦後の状態(ケインズ資本主義)は資本の歴史において特異だった。
そして、最近(新自由主義経済)は、第一次大戦以前の格差の大きかった状態に戻りつつある。
その一番の特徴が、資産の格差であって、この問題をどう解決するのかが各国の智慧である。
彼は「グローバル累進資本税」を提案している。
グローバル資本主義のなかで、一国で税制改革をやっても、他国に行くだけだからだ。
 
この資本主義のシステムの中で、
様々な問題をデータをきちんと集め、分析することで問題点を明らかにしている。
そして、その現生や問題点を様々な仮説を用いてできるだけ合理的に説明すようとする。
そして、法律を用いることで、より効率が良く、より働き甲斐があり、成長する社会
つくることができるということだ。
 
その点では、問題点の提示が説得力があるし、提案が受け入れられやすいのではないか。
しかし、資産がいくら増加しても、経済成長がなければ底辺層が底上げされないというのは、
このシステムそのものの行き詰まりを示していると思う。