「アイヒマン実験」

ミルグラムが行った通称「アイヒマン実験」という心理実験がある。
いつだったかTVで映像で紹介されていて、その結果にびっくりした覚えがある。
 
1、記憶と学習についての実験であると説明
  教師と生徒を決める
  生徒が間違えると教師が電気ショックで罰を与える (これは演技である)
  生徒が間違えるたびに、与える電気ショックの強さをあげていく
 
2、教師が躊躇したら、白衣を着た権威のある博士らしき男が断固として通告する
  その結果、六割以上が、最も強いショックを与えるまで強度を上げ続けた
  生徒が苦痛を訴えていたにも関わらず、途中で放棄することなく実験を継続した
 
だいたいこのような実験である。
なぜ、「アイヒマン実験」と言われるのかもわかると思う。
この実験からどんなコンテキストと意味が生まれてくるのだろうか。
 
この実験は、多くの人間が権威に服従して、平気で他人を傷つけられることを示している。
決められた設定と権威は、かくも簡単に人間を「アイヒマン」にしてしまう。
 
では、このとき教師役の人には何が起きているのだろうか?
そうなるのは特別の人だけだろうか?
なぜ「アイヒマン」になってしまうのか?
 
そこには「魂」を傷つけ、「学習」を阻害する「ハラスメント構造」がある。
このハラスメントは、家庭や学校や職場や友人関係、組織などに潜んでいる。
というのが『ハラスメントは連鎖する』の重要な問題提起である。
 
この実験をふりかえると、私自身、何度も「アイヒマン」になったことがあると思い当たる。
そして、それがどれだけ恥ずかしいことであるのかも自覚できる。
問題はこの後である。
それが人間の弱さだと簡単に結論を出してはいけない。