赤ちゃんはアブダクション推論をしながら「学習の仕方」自体も学習している

「対蹠人のたとえ」は相手に伝える置き換えの法則さえわかっていればクオリアを感じているかどうかは問題ないということだった。それは確かだが、クオリアを伝えるにはどうしたら良いんだろうか。
それにしても伊集院さんの置き換え(たとえ)はいつも見事だと思う。
この置き換えこそローティが行おうとしたこと。

昨夜『言語の本質』を読んでいてびっくりしてしまった。

天才チンパンジーのアイは、黄色→△、赤→◇、黒→〇・・・という対応があることは学習できる。ところがこのトレーニングをした後に、この逆△→黄色はできないという。それは論理的には当たり前のことで、「逆は必ずしも真ならず」であるから。
ところが、8か月の赤ちゃんはこの逆の対応ができる。
とすると、人間は「黄色の積み木が△だから、△は黄色の積み木だ」という推論を生まれつき持っており、チンパンジーにはそれがないということになる。
今井・秋田さんはこの推論を「対称性バイアス」と呼んでいる。
そして、こういう推論はまさに演繹的ではないので「アブダクション」であり、こういうバイアスを「アブダクション推論」と名づけて、これこそが人間が言語を持てた理由ではないかという仮説を提示している。
(クロエというチンパンジーは対称性バイアスを持っていることも確かめている)
とすると、アブダクション推論は創造的な科学者だけが持っていると思っていたけど、人間の持つ自然な推論であって、それがあるので複雑な言語を習得し、学習の仕方も学んでいるということだ。(ここにびっくりした)
やはり、子どもは科学者と同じことをしている。
でも、だからこそ様々なバイアスの例でも分かるように間違いもする。

ChatGPTが「人間」を変える ―― 認知科学者の警告
:日経ビジネス電子版 (nikkei.com)