けい蛄春秋を識らず

  「蟪蛄(けいこ)春秋を識らず、伊虫あに朱陽の節を知らんや

蝉は夏に地上に出てきて夏に死ぬから春と秋を知らない。
だから今が夏(であること)も知らない。
        ↓
今しか知らない人は、今も知らないということも示している。
確かにそうだと思う。
生きていることしか知らない人は、生きていること自体も知らないのかもしれない。

門主が宗会のご教示で「Post-truth」=「ポスト真実」を取り上げておられた。
この言葉は、オクスフォード大学出版局が、昨年注目を集めた英単語、として選んだもの。
意味は、「客観的な事実や真実が重視されず感情的な訴えが政治的に影響を与える状況」を意味する形容詞。
アメリカ大統領選だけでなく、この列島でも同様のことが行われている。

アメリカ大統領選では、マケドニアの青年たちが立ち上げたフェイクニュースが、トランプの支持者に対して出した場合が一番儲かる(一番見る人が多く、クリックをしてくれるので)ということで、過激なフェイクニュースを流した。
これはヒラリーやサンダース支持者に対しても行ったが、トランプの場合が一番多くの人が見てくれて、シェアをしたから集中的にトランプにしたらしい。
ちなみに広告収入は1クリック0.5円とすると100万カウントで50万円。
そこには、政治的な思惑はない。

これは、真実が何かがますますわからなくなることを示しているし、お金を儲けることが一番の真実とも言える。

仏教徒は「真実はある」と考える。
でも、私たち凡夫には真実は見えにくいと考える。
表題は、仏教徒の真実に対する態度を表明したものだ。

真実はあるけど、私たちには何が真実かわからない。
 だから、より広い世界を知ることが、自分の狭い世界を知ることになる

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