「郡上おんな」古川のぶ著

昨夜眠られずに「郡上おんな」古川のぶ著を読み始めた。
つい最後まで読んでしまった。
 
最初は、与之助さんのことを調べようと思って借りたのだが、
明治から昭和初めまでの郡上女の生涯をたどってしまった。
それは太古からの郡上の歴史であり、
人々の織り成す苦労の生活であった。
「郡上女に武儀男」
そういわれるのは、郡上の女は働き者で気立てが良く信心深いからである。
 
主人公のとりは、その73年の生涯を昭和20年に終える。
食べるのものもない生活の中で、苦労に苦労を重ねた家で子どもたちに見守られ、
「あれ、ここはどこじゃろう?美しい花がいっぱい咲いいとるが、夏枝には見えんかい。
あァきれいじゃ、きれいじゃ。」
といいながら。
 
最初、いろいろな人物や地名が出てきて混乱するので、
地図と人物の系図を書きながら読みすすめた。
あまりにも様々なことが起こるののだが、
自分自身のことと重なって思い出され、
つい感情移入してしまった。
 
娘がやけどをおう所など、自分自身が6歳ごろ蚕の囲炉裏に落ちてやけどをおい、
祖母におぶわれて医者に走った時のことを思い出してしまった。
他力の信心を求めながら、愛欲の中で苦しむ主人公とりの生き方に
愚かとはいえない懸命さを見出し、涙しながらの読書だった。
 
生きるということはどういうことなのか。
生き切った、とりの人生を振り返りながら自身のことに思いをはせざるをえない。