「イーハトーボの劇列車」

松の内だったと思うけど、
テレビをつけたらたまたまこまつ座の「イーハトーボの劇列車」をやっていたので見た。
 
宮沢賢治のお父さんは浄土真宗の篤信家。
正信偈や御文章に親しんでいた賢治は島地大等(浄土真宗の僧侶)の訳した法華経を読んで、
そのドラマチックな内容に感激し、それ以来法華経日蓮宗)の信者になる。
井上ひさしのセリフは、父と子の論争という形で賢治の葛藤を描いていく。
 
法華経仏国土は、この世界での仏国土の建設をめざす。
それは賢治にとってユートピアの実現であった。
そこを父は突く。
仏国土を求めて東京に行ったのはおかしい。
岩手をこそ仏国土にする必要があるのではないかと。
 
浄土はユートピアではない。
あくまで外に、西方に、たてたものである。
賢治にすれば、現実を見ずにそこに逃避するという弱点もあるのではないかと。
この辺の論争は面白い。
 
南無妙法蓮華経南無阿弥陀仏の違いの論争も面白かった。
父は経典が救うというのはおかしい、阿弥陀という仏が救う方がわかりやすいと言う。
実は妙法蓮華経を久遠実成の本仏釈迦如来の名号ととらえれば同じことなのだが。
 
賢治のユートピア建設の試みは挫折する。
百姓として生きるという試みと共に。
しかし、その心は彼の作品となって私たちの心をうつ。
理想の実現よりももっと大きなことを成し遂げたとも言える。