天元の1を立てて未知数とする

いつの間にやら11月になっていた。
 
数学教室で和算を取り上げようと思っていたので、
天地明察」を見ようと思っていたが、風邪やらいろいろあって
最終日にやっと見に行くことができた。
最終日だというのに十数名。
 
最初は、興行用の操作に戸惑い、史実とは思われないところが気になった。
例えば、関孝和は浪人風に扱われ、算術教授の看板がかけられていたが
彼は、甲府藩の家臣であり、後に幕臣になっている。
そして、山崎闇斎が暗殺されたのにはびっくりした。
 
でも、時間がたつと、少し別の面が見えてきた。
その一つに、「北極出地」の観測に出た時の上司である
笠野高史演じる建部伝内と、岸部一徳演じる伊藤重孝たちの優しさがある。
 
北極星の高度を予測してから観測することをしていて、
それを主人公の算哲にもやらせ、彼が合っていると、「明察」と大きく評価するのである。
算哲の創った問題を正す時も、優しく指摘している。
算哲から関孝和の話を聞いて、はるか年下なのに弟子入りしたいと望む。
 
彼らの学を求める真摯さと同時に、自然や人間に対する尊重の思いがにじみ出ている。
彼らは、命令によって算哲を動かそうとは考えていない。
やってみようと自然に誘い、さらに自らの夢をも語る。
そこには権威を振りかざそうとする心は微塵も見られない。
 
もう一つは、天元術は表計算と同じなんだと気がついたこと。
現代風に言えば、エクセルを使って問題を解くようなものである。
算哲が、算額を解くために、紙を広げて算木を置き解き始める場面がある。
1元n次方程式を解くために天元術を使っているのだ。
私も天元術を理解したいと初めて感じた。
天元の1を立てて未知数とする」というところから、初手天元の手が出てきたのだろう。
 
最後に、天元術は中国で考えられ日本に伝わった。
それを理解し、さらに発展させて点竄術や円理などの和算を生み出す。
中国の授時暦を経度の差を考慮して日本にあったように変える。
仏教も同じである。
私はラーメンとキツネザルの譬で、以前このことを説明したことがあるが、
日本という辺境は、グローバルではない意外な面白さを作り出すところかもしれない。