うその念仏

 
《香樹院語録》より、心に触れた個所をもう一つ。
 江州草津の木屋にて、女按摩、香樹院師を按摩しながら、念仏したるに、
「汝よく念仏せり」との仰せなりしかば、
按摩はじ入りて、「うその念仏ばかり申して居ります」と答う。
 師の仰せに、「おれも、うその念仏ばかりして居る。
こちらはうそでも、弥陀のまことで御助けじゃぞや。」と。
 女倒れて悲喜の涙に咽びぬ。
 
 
この女性の按摩さんは、目が不自由だったのでしょう。
それまでの苦労がしのばれます。
もちろん、本を読むこともできません。
だから、ただ耳で聞いた念仏を称えていたのでしょう。
でも、その念仏は本当の念仏ではないと思っていました。
徳龍師の言葉は、私も同じうその念仏だという言葉でした。
でも、弥陀の方はウソではない。
彼女が倒れこんで泣きだした気持ちが分かります。
 
 
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