「まいまいつぶろ」

図書館で村木嵐著「まいまいつぶろ」を借りてきた。
著者は司馬遼太郎家の家事手伝いをしていたという。

九代将軍家重とその小姓大岡忠光の物語。
そこに宝暦治水事件と郡上一揆が加わる。
何度も涙を浮かべながら読み終えた。

身体の不自由な家重の苦しみは何よりも自分の思っていることを他のものに伝えられないこと。これは何よりも苦しいことであると感じる。
その彼の言葉を理解する者が現われた。それは同時に両者の苦しみとなる。
障がいを持った将軍という特殊な立場だけど、かえって障がい者への差別が浮き出る。つい「ケアの視点」で読んでいた。

郡上一揆は藩主だけでなく老中を筆頭に寺社奉行など閣僚が罷免させられた唯一の一揆である。
それを幕閣や将軍の立場で書いている。
郡上一揆の別の方面からの解釈に触れ、また世界が広がったと感じる。

一つ疑問に思ったことがある。
田沼意次が家重にお目通りをするとき、「一万石では3人の騎兵、10万石では10人の騎兵を持つことが定められているが、他の石高ではどうなるのか」というのを、図を使って説明するという場面があったけど、その図の意味が分からなかった。

普通に考えれば、石高をxとし、騎兵の数をyとしてy=ax+bという一次関数になると仮定する。そうすると、3=a+bと10=10a+bを解けばいいことになる。
答えはy=7/9x+20/9となる。
こういうことなんだろうか?

この小説が直木賞に選ばれなかったのは残念。