民俗学の聞き書きについて

筑波大学の学生が訪ねてきた。
報恩講のことをいろいろ話した。
若い人たちと語り合うことは楽しい。
語りながら聞きながらイメージが広がってくる。
 
民俗学の調査だという。
何を調べるのか。それはいつのことか。昔のことか今のことか。
聞き取りとは何か。だれから聞くのか。何を聞くのか。聞いたことから何が現われてくるのか。
 
そんな疑問を持っていたので、最初に尋ねた。
何を聞きたいのかと。
この問いには、前提がある。
民俗学者六車由美さんという方がいる。
彼女は、大学教員であったが、職を辞して介護職員となった。
 
六車さんは、介護施設で老人から聞き取りをしている。
介護はケアをする側とされる側という不対称な関係がある。
でも、聞き書きを持ち込むと、聞く側、話す側という新しい関係が生まれ、
関係は逆転したり対等になると語る。
そして、それが結果的にケアも良くしていくという。
 
一人一人の人生を聞く中に「忘れられた日本人」と出会う場があったと気づかされたという。
何か研究の対象があって、それを調べるために聞き取りをするということではない。
一人一人の人生があって、それを聞き取り、書く人がいて、その人の生きた証を記録していく。
その中から見えてくるものこそ、「民俗学」ではないかと思う。
 
イメージ 1