「前」は過去か未来か

小学校2年生の時計の学習で子どもたちが混乱するという問題がサークルで話題になった。
 
最初の躓きは「前」という言葉の意味。
「前」というのは過去を示す意味であることが理解できていない。
「前」だから「未来」のことだと考えてしまい、
「30分前」だと時計の針を先に進めてしまう。
 
もう一つは、時間の時刻と時間の読み方を子どもたちが混乱するという問題。
 
もともと授業で取り上げる時間が少ないのだが、
その教材自体の問題があって子どもたちが混乱する。
 
時刻と時間の問題は、日本語自体に問題があるという話が出た。
例えば、
2時と2時間とはちゃんと区別するのに、20分間とは言わないで20分で済ましてしまう。
分や秒では間をつけないことの方が多いことが子どもたちの混乱のもとではないか。
私たちは20分かかると言うが、これは時刻なのか時間なのか子どもたちにとっては混乱する。
 
英語は時刻と時間の言い方をはっきりと区別している。
ところが私たちは「今の時刻は?」と言わないで、
「今、時間は何時ですか?」と聞いたりする。
 
私たちの使い方ではどうして時刻と時間をしっかりと区別しないのだろうか。
時間が時刻をも含んでいるのと、日本語の省略的な使い方に問題があるようだ。
2秒間とは言いにくいのだ。
 
もう一つの「前と後がどちらか分からなくなる問題」は、
そもそも私たち大人が混乱している。
「前」という場合に、過去なのか未来なのか分からなくなっている。
前にあるから未来とも取れるし、以前ととらえると過去になってしまう。
 
英語のbeforeはそれよりも前という意味と、前方という意味がある。
afterはそれよりも後だが、
イメージとしては、beforeは過去(以前)でafterは未来(以後)とはっきりしている。
 
日本語では、
「前」が場所に使われると、自分の前ということで未来というイメージが浮かんでくる。
「未来に向かって進め=前に進め」と言っている。
たぶん、これが子どもたちにとって混乱のもとなのだろう。
 
私は「過去を向いて未来に後ろ向きに歩いている自分」をイメージすることにしている。
私の前には、はるかな過去が広がっている。
 
 
 
つれあいがこう言った。
「ご飯の前に手を洗いなさいと言うでしょう。
その時に、ご飯を食べてから手を洗うの?。時計も同じだよ。と言えばいい。」と