昨日のPIAAC(ピアック)の「国際成人力調査」について再考。
最初、「成人力調査」は間違いで「成人学力調査」だと思っていた。
Programme for the International Assessment of Adult Competencies
「成人能力」の国際的な評価の調査
一方子どもたちの方は、
PISA(Programme for International Student Assessment)は
国際的な学習到達度に関する調査は、「学生の評価」=「学習到達度」である。
成人の能力を文科省は「成人力」と訳した。
私は「成人学力」だと思った。
この違いを読み取るには読解力が必要だ。
単なるテストだから「成人学力」、しかし「成人力」はもっと大きい。
この点に関しては松下教授に賛成。
藤原氏は「日本伝統のたたき込む教育が正しかった。」
佐藤氏は「欧州諸国が伸びなかったのは移民比率が影響。子どもの結果と比較して大人の受けてきた教育は正しいとするのは間違い。」としている。
新聞のデータだけでは、どちらが正しいのか読むことはできない。
そこで元のデータを取り出し、分析してみた。
で調べてみる。
これは、その国で生まれた人の得点の平均とそうでない人の平均である。
Yes | No | |
Denmark | 283 | 245 |
France | 260 | 215 |
Germany | 277 | 239 |
Italy | 249 | 232 |
Japan | 288 | |
Spain | 249 | 227 |
United States | 258 | 226 |
右側が移民の得点と考えてよい。
佐藤氏の意見データから肯定されそうだ。
さらに、この平均の差から、その国生まれの割合を求めてみる。
平均の平均は足して2で割れば良いのではないからデータの比を求めることができるのだ。
Averages for numeracy, age by Background - Born in country , year and jurisdiction: PIAAC 2012 | ||||
Yes | No | 平均 | 自国生まれの割合 | |
Australia | 271 | 259 | 268 | 0.75 |
Austria | 280 | 248 | 275 | 0.84 |
Canada | 271 | 250 | 265 | 0.71 |
Czech Republic | 276 | 264 | 276 | 1.00 |
Denmark | 283 | 245 | 278 | 0.87 |
Estonia | 275 | 260 | 273 | 0.87 |
Finland | 285 | 234 | 282 | 0.94 |
France | 260 | 215 | 254 | 0.87 |
Germany | 277 | 239 | 272 | 0.87 |
Ireland | 255 | 256 | 256 | 0.00 |
Italy | 249 | 232 | 247 | 0.88 |
Japan | 288 | 0 | 288 | 1.00 |
Netherlands | 286 | 239 | 280 | 0.87 |
Norway | 285 | 238 | 278 | 0.85 |
Poland | 260 | 0 | 260 | 1.00 |
Republic of Korea | 264 | 231 | 263 | 0.97 |
Slovak Republic | 276 | 268 | 276 | 1.00 |
Spain | 249 | 227 | 246 | 0.86 |
Sweden | 289 | 233 | 279 | 0.82 |
United States | 258 | 226 | 253 | 0.84 |
これを見ると、スウェーデンは日本よりも点数が高い。日本は一位ではない。
そして、テストを受けた人の移民の割合がほぼ予測できる。
ちなみに移民のデータは、http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1171.htmlにある。
以上のデータから佐藤氏の分析は正しい。
次は国別の得点分布。(読解力の習熟度レベル別の成人の分布)
よく見るとパターンがある。そこで特徴的な国を取り出してみると次のようになる。
分布が左右にずれているだけなのだ。
その国の言語で調査をしたというが、このデータでは欠損の人数が多いのは日本もであってそれがなぜかは気になる。
確かに日本の成人トータルとしてレベルが高いが、それは学校教育の成果だと言えるかどうかは
他の国が移民の数が圧倒的に多いことを考えると、言えなくなる。
次にPISAのデータと比較してみよう。
このグラフには明確な二つのパターンが認められる。
グラフの山が右の方に片寄っているのである。
ところが上のグラフはずれているだけで、山は対称なのである。
つまり、意図的な努力は見られない。
子どもたちの方が右に片寄っているのは、
学力をあげようと努力している(そういう環境にある)ことを示している。
「読解力スキルと職業との関係」のグラフ(日本とOECD平均)がある。
このグラフは、スキルが高い人がスキルを必要とする職業についているとも読めるが、
単純作業の従事者のスキルとの乖離が大きくなっている。
つまりスキルが仕事に生かされていないのである。
それが平均よりもかなり大きくなっていると読める。