「騙すものと騙されるものがそろってこそ戦争は起きる」

「山本慈昭 望郷の鐘 満蒙開拓団の落日」の上映が終了した。
300人ほどの方々が見に来てくれた。
 
阿智村の満蒙開拓記念館で購入した満州開拓団の地図を展示した。
兄が行ったとか、ご自身も苦労したという方が話しかけてくれた。
また、親から話を聞いていたという方の話も聞いた。
それは決して過ぎ去った過去の物語ではなかった。
 
2時間近くかかる映画であったが、素直に見ることのできる映画であった。
最後に娘と再会し、ジャガイモを食べながら「よく噛んで食べるんだよ」という場面では涙が出てきた。
慈昭師の生き方は、次の歌に集約されると思う。
 
「人はみな それぞれ悲しき 過去持ちて 賽の河原に 小石積みたり」
 
満州移民が国策で行われたことと敗戦時の棄民は、はっきりと政治の責任だが、
それを後ろから押しあげた私たちの中の動きを忘れてはならない。
当時の農村が貧しかったというだけではない。
村々の忠誠を競い合うような構図、そして同様に忠誠を競うように子どもたちと親に移民を勧める教師。
 
「騙すものと騙されるものがそろってこそ戦争は起きる」
 
敗戦後に、慈昭師の取った行動は、
聞き取りからはじまり、ダム建設で強制連行された中国人遺骨の収集と返還運動、
そして、残留孤児の帰国救援活動の取り組みなど、
被害者としての立場だけでなく、加害者としての立場も決して忘れないものだった。
 
多くの人に見てもらいたい映画である。