「狗賓童子の島」飯嶋和一

友人に勧められた「狗賓童子の島」(飯嶋和一著)を読み始めて4日目。
 
引き込まれ涙を流しながら丁寧に読んでいる。
時間がかかるが、年表を作り地図を見ながら。
 
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隠岐の島に流人なって来た、大塩平八郎の乱の関係者が主人公である。
幕末に起きる各地の一揆を取り上げているが、
それは、主人公への説明になっている。
父が大塩の乱に加担したことで、自身には罪が無いのに遠島になったことの、
直接話を聞くことができなかった蜂起せざるをえなかった父の気持ちの。
 
そして、何よりも引き込まれるのは、無学で、貧しく、過酷な生活の中で懸命に生きる人々の心根が丁寧に描かれていることである。
それは主人公の目を通してだが、それが主人公の生き方にも反映される。
 
この物語には、隠岐という島がたどってきた大きな歴史が根底にある。
小野篁後鳥羽上皇後醍醐天皇という有名な人だけではない。
遠島になっても島のために働いた名もなき人々の歴史。
何よりも、それを受け容れてきた人々の歴史。
そして、明治維新の民衆の側からの歴史。
 
飯嶋和一の小説は初めてだが、幕末の歴史を辺境の島から見るという手法にも感心している。
それこそが、私たちの歴史なのだから。