アリス・ミラーの「才能ある子のドラマ」を読んで

アリス・ミラーの「才能ある子のドラマ」を読んだ。
 
以前から持っていた疑問、
「民主的なワイマール共和国憲法のもとで、なぜナチスが台頭したのか?」
 
天文学的な賠償金を支払うために、政府は通貨を増産させ、賠償金を支払う。
しかし、帝政期の、軍事費を払うための過度の国債の発行とあいまって、ドイツの貨幣経済を崩壊させる。
人々の不満は心の中に帝政時代への憧れを生み出す。
その憧れは、強力なリーダーを求め、危機管理を利用してナチスの独裁体制を築くために利用される。
 
経済的な困難については理解できるが、痛めつけられたドイツの民衆がなぜヒトラーの台頭を許したのか。
そのことに関して、アリス・ミラーは、「ヒトラーとそのフォロアーがなぜ生まれたのか」という問いを教育の面から見直し、一つの答えを見出す。
 
それは、19世紀末帝政ドイツ周辺で流行していた「シュレーバー教育」の影響。
その教育法は、子どもに厳しい「教育」を「しつけ」の名のもとに行う肉体的・精神的虐待であった。
父親からしつけとしてひどい暴力をふるわれた子は、
その暴力が「私を愛しているがゆえ」であると思いこもうとする。
そして、他人に対して暴力をふるうことは真に愛することだという考えを生み出す。
そういう人たちはこのヒトラーのストーリーを共有していった。
同じように傷つけられた人間は同じ傷を共有して舐めあうと楽になり、偽りの絆と偽りの安心を得られる。
 
「苦しいものであるがゆえに抑圧された、かっての自分の経験した軽蔑の記憶が、危険で破壊的な人間蔑視となり、それが政治綱領化される。」
 
 
シュレーバー教育」は現在でも滅びてはいない。
http://wpmu.hidezumi.com/?p=275「魂の殺害者」