如月の望月の頃

 90を過ぎた親父たちの願いは次の西行の歌である。
 
「願わくば花の下にて春死なん
        その如月の望月の頃」
 
満開の桜の下で如月の満月の夜に死にたいものだ。
これは雪の中でじっと閉じこもっている老人たちの切実な願いである。
そして、雪の中では迷惑をかけるという気持ちも込められている。
 
昔、この歌について考察したことがある。
如月は2月、望月は15日。
つまり、2月15日なのだが、この日は釈尊が亡くなった日、涅槃会の日なのだ。
西行さんは釈尊を限りなく尊敬し、また桜の花を限りなく愛していた。
 
ところで、旧暦は月が基準だから15日は満月であるが、
一ヵ月は30日(みそか)に決まっているわけではない。
月の周期は29.5日だから大体二ヶ月に一度は29日にしなければならない。
また29.5×12=354だから365-354=11なので、
一年に11日のずれが出てくる。
そこで、このずれを解消するためには、約3年に一度一月を入れないと
月と季節とのずれが出てくる。
これが閏月である。
 
では、4月の初めに如月の15日が来ることはどれくらいあるのだろうか。
ちなみに今年の如月15日は太陽暦の4月3日になっている。
ほとんどは、3月10日から3月23日ぐらいなのだが、
調べてみるとどうやら7年に一度ぐらい4月の初めになる時がある。
つまり、如月の15日に桜が咲いている年は7年ごとであり、
今年は7年ぶりの年だということになる。
満月の夜桜が見える絶好の年なのだ。
 
願わくば花の下にて春死なん その如月の望月の頃