理と情について

理と情について一言
 
さとりの世界は知の世界で、そこは縁起の道理による、諸行無常諸法無我の世界。
ただし、知と言っても、このさとりの世界は佛の無差別智でしか認識できない。
私たちは差別智しか持っていないが、この無差別智の世界を感ずることはできる。
 
佛はその無差別智で、智の世界と悲の世界をどのように統合したのだろうか。
平家物語を見ると、法然上人が登場する段がある。
 
一の谷の合戦で捕虜となった平重衡が鎌倉に送られる前に、法然上人に会いたいと願い出て
許可されるのである。
重衡は、東大寺を焼いてしまったことなど、自身の罪を語り、どうやったら救われるのか上人に尋ねる。
その時、法然上人は重衡の話を聞きながら、
「泪にむせび、うっぷしてしばらく何も話さなかった。」
と書いてある。
 
法然上人は理のみの人ではない。
情の人である。