「生きることについて」

今年はボタンの花がたくさん咲いている。
母が写真を撮ってくれと言った。
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このボタンの花を見ながら、
チェルノブイリハートの冒頭で出てくる、トルコの詩人ナジム・ヒクメットの詩を書き留めておく。
 
『生きることについて』 ナジム・ヒクメット
 
生きることは笑いごとではない
あなたは大真面目に生きなくてはならない
たとえば
生きること以外に何も求めないリスのように
生きることを自分の職業にしなくてはいけない
 
生きることは笑いごとではない
あなたはそれを大真面目にとらえなくてはならない
 
大真面目とは
生きることがいちばんリアルで美しいと分かっているくせに
他人のために死ねるくらいの
深い真面目さのことだ
 
真面目に生きるということはこういうことだ
 
たとえば人は七十歳になってもオリーブの苗を植える
しかもそれは子どもたちのためでもない
 
つまりは死を恐れようが信じまいが
生きることが重大だからだ
 
 
この地球はやがて冷たくなる
 
星のひとつでしかも最も小さい星 地球
青いビロードの上に光輝く一粒の塵
それがつまり
われらの偉大なる星 地球だ
 
この地球はいつの日か冷たくなる
氷塊のようにではなく
ましてや死んだ雲のようにでもなく
クルミの殻のようにころころと転がるだろう
漆黒の宇宙空間へ
 
そのことをいま 嘆かなくてはならない
その悲しみをいま 感じなくてはいけない
あなたが「自分は生きた」と言うつもりなら
このくらい世界は愛されなくてはいけない
 
 
最後の連と最後のフレーズは、今でも思い出すと涙が出てくる若者たちの
悲しみにかろうじて応えることのできる言葉だと感じる。