圏論と暗黙知

 

圏論を理解するには、まず圏の例を知ることが必要だ。
それは、圏論応用でもある。
また、その理論を創り出す過程(をさぐること)でもある。
様々な現象があってそれを理解する理論を創るのだから。
 
そして、私が一番イメージできたのは、
位相空間連続写像のつくる圏」と「位相空間のPを基点とする基本群のつくる圏」
の関手であった。
昔やったガロア理論も体から群への関手だ。
そうやって少しずつ理論が理解できてゆく。
次はこの圏論を何にどのように応用したらよいか。
 
数学理論が理解されるとはどういうことか。マイケル・ポラニーによると、
 
(1)数学的理論とその理論の内容とを関係づける行為とは、それ自身、一つの暗黙的な統合であるが、これは対象を指示する指示的単語を用いることの中に見られる暗黙的な統合と同じ種類のものである。
(2)真に理論を知るといううことは、その理論が内面化され、さらに経験を解釈するためにそれが縦横に用いられたあとにのみ可能となる。
(3)したがって、数学的理論は、それに先立つ暗黙知に依拠することによってのみ、構成されうるのである。そして、数学的理論が理論として機能しうるのは、暗黙知の行為の内部においてのみである。
(4)ところで、その暗黙知の行為とは、我々が、理論から、理論と関係づけられるがしかし理論以前に成立している経験へと、注目することに他ならない。かくして、経験についての包括的な数学理論からすべての暗黙知を除去する、という理想は自己矛盾であり、論理的に正しくないことが明らかとなる。」『暗黙知の次元』より
 
関手も射も矢印で表される。
矢印の指し示すものとの間にどのような関係が生じるのか、それを考えたいと思って学び始めた。
それは、学生時代にやったことの意味付けでもあった。
また、この多層な意味の社会をどのように位置づけるのかという問題でもある。
それは、そこにどのような問いを提出できるのかという問題である。
 
応用
川の圏」を考える。するとそれとよく似た「道の圏」が指し示される。
では、どこが似ているのだろうか?
 
川(流れ、分岐(合流)、運ぶ(積む、削る)、決壊、海)→ 道(流れ、分岐、運ぶ、決壊)
 
他にも同じような圏があるのだろうか?
 
道(流れ、分岐、運ぶ、決壊)→ 血管(流れ、分岐、運ぶ、決壊)
 
川(流れ、分岐(合流)、運ぶ(積む、削る)、決壊、海)
↓           ↓
木(流れ、分岐、運ぶ)+幹(海)+根(流れ、分岐、運ぶ)
木の幹に当たるところが川の海に当たるところ。
 
人生はよく川の流れに例えられるけれど、それはなぜか?
 
川(流れ、分岐(合流)、運ぶ(積む、削る)、決壊、海)
↓           ↓
人生(成長、出会い、経験、関係の決壊、死)
 他者との出会いによって、その人の人格(経験)はより豊かになる。そして、最後は海(一乗海)に合流する。
 
さて、川から出発した圏は同じようなものが多数存在する。
これをまとめて「流れの圏」とする。
そうすると、様々なものを同じものとして見ることができる。
情報も流れる、生命の進化も流れととらえることができる。
一見違っていると思われていることにも同じ構造が潜んでいることがわかる。