「相対主義」と「普遍主義」の問題

『「みんな違ってみんないい」のか?』 山口裕之著を読み始めた。
とても刺激的で面白い。
この本の特徴は、強調したいところを太字にしてあること。

私は、「正しさは人それぞれ」でも「真実は一つ」でもなく、人間の生物学的特性を前提としながら、人間と世界の関係や人間同士の間の関係の中で、いわば共同作業によって「正しさ」というものが作られていくのだと考えています。それゆえ、多様な他者と理解し合うということは、かれらとともに「正しさ」を作っていくことです。
・・・
「まあ、人それぞれだからね」。対話はここで終了です。
ともに「正しさ」を作っていくということは、そこで終了せずに踏みとどまり、とことん相手と付き合うという面倒な作業です。相手の言い分を受け入れて自分の考えを変えなければならないこともあるでしょう。
・・・
しかし、学び成長するとは、今の自分を否定して、今の自分でないものになるということです。これは大変に苦しい、時に心の傷つく作業です。

という前書きに引かれて読み始めたのだけど、第4章『「正しい事実」を人それぞれで勝手に決めてはならない』
のところで「二次方程式の解の公式」を例にとって、解の公式を導くための論理は必然だけど、それを考えついた人の思い付きは偶然でもある(そもそも自分で考えることはほぼ不可能)と述べられ、「二次方程式の解の公式」は発見される前は存在していなかったと述べられる。⇨【数学アラビアンナイト

私は数学の世界は実在していて、そこにすでにある真理(定理など)を発見することだと思っていた。
ところが山口さんはそれは私が発明している(創り出している)だけだという。
この論理がなかなか説得的で、頷いてしまうのだ。
そして、私の実感(経験)は今までの思い込みを変えよと言っている。

これはその例

極と極線から作った三角形に内接する楕円の焦点を求める方法。
以前GeoGebraで作ったのでそれを再現(再度構成)しようとした。
でも、その通りに動かないのだ。
以前のシートを何度も見てようやく再現できたのがこれ。
(楕円と円の交点が移動してしまうので垂直二等分線が逆になってしまう。最初に同時に交点を作ってから上下の二点を選んで垂直二等分線を作れば、移動しても位置関係は変わらない。)
この作図の仕方は極めて技術的であるし、そもそもGeoGebra自体が技術なのだ。
だから下に書いてあることは納得できる。

数学における「正しい事実」は、人間がある対象を思い通りに動かすことができる「技術」と表裏一体のものとして発明される

そして、GeoGebraを用いていろいろな発見(発明)ができることの理由がわかった。
これは私の個人的な体験であり発明なのだ。
だから共同的な作業ではないけど、GeoGebraという共通の技術を使っているのでかろうじて数学の共同体に引かかっていると思う。

草を刈って苗を植えた畑に敷いた。