100分de名著で上野千鶴子さんがボーボワールの「老い」を取り上げていた。
おふくろの老いに付き合っていくとついイライラする。
自分も同じだと思っているけど、老いていく自覚が少ないからよけいイラつくのだ。
でも、老いの寂しさを感じている同じ老人ではないか。
ところが母の方は私を子どもだと思っているからややこしくなる。
父が書いていた法語から(江戸時代の狂歌らしい)引用。
シワが寄る ほくろができる 背はちぢむ
あたまはハゲる 毛は白くなる手はふるふ 足はよろつく 歯はぬける
耳はきこえず 目はうとうなるみにおふは 頭巾えり巻 杖 眼鏡
たんこ温石 しびん 孫の手くどくなる 気みじかになる 愚痴になる
心はひがむ 身は古くなる聞きたがる 死にとふながる 淋しがる
でしゃばりたがる 世話をしたがるまたしても おなじはなしに 子をほめる
達者自慢に 人はいやがる
まったく江戸時代から変わっていない。
ただし老人の年齢が異なる。50歳⇒80歳かな?
さて、番組の方だけど今日で2回目。これくらいの間隔で読むのが一番いい。
今回はそれぞれの老いの状態を取り上げていた。
数学者や科学者が業績をあげるのは30歳までで、40歳はすでに老いている。
ここに55歳の数学者の話が出てくる。
「新しい定理の直感を持った時、それまでの知識を再検討しなければならなくなることを悟る。それが耐えられないと」
それまでの知見や発見を大事に持っていては、次の発見に至れない。
それができるのは「多くの情熱と精神の自由」を持っている若者である。
ところがゴヤやバッハやベートーベンは老年になるほど素晴らしい作品を残している。
ラッセルや多田富雄は老いても身体が不自由になっても活動を続けた。
瀬戸内寂聴さんのことは言うまでもないだろう。
老いたゲーテが講演の最中に失念して20分近く黙ったまま聴衆を見つめていた。
その時聴衆は尊敬の念から身動き一つしないでいた。ゲーテは再び語り始めた。
上野さんはいい話だと語る。